キャラクタービジネスの会社から転職されたそうですね。

大学を卒業して北海道の広告代理店に就職し、その後、同じ北海道の会社に転職し、キャラクターライセンスの企画営業の仕事をしていました。その会社ではイベントやグッズなどの企画営業を担当し、音楽やイラスト、動画を制作している多くのアマチュアクリエイターと接する機会がありました。そうした人たちの中には、メジャーデビューして誰もが知る有名人になった人がいる一方で、凄く才能があるのに芽が出ない人もたくさんいました。そんな人たちの飛躍のきっかけをつくる仕事がしたいという想いと、東京で働いてみたいという想いが重なり、転職を考えるようになりました。

ピクシブを知ったきっかけは?

キャラクタービジネスの会社で一緒に仕事をしていたピクシブの社員から「東京で働きたいならピクシブがいいよ」と薦められたのがきっかけです。私はゲームと漫画が好きで、大学では美術研究会に所属し、ピクシブでイラストを見ることも好きでした。大学生のとき、ピクシブやその他の動画配信サービスがスタートし、サブカル文化が一気に広まっていく楽しさを肌で感じていた経験も、ピクシブへの興味につながっていました。

転職を機に、北海道から上京されたのですね。

27歳まで北海道以外に住んだことはありませんでした。ピクシブは、会社から1.2㎞圏内に住めば5万円の住宅手当が出るなど福利厚生が充実していますが、その前に引っ越し費用がかかります。そこで北海道のマジックバーで働いて引っ越し資金を貯めました。その時に覚えたマジックはピクシブの面接でも披露しましたが、誰も笑ってくれませんでした。でも受かりました(笑)。

ピクシブでは、どんな仕事をしたいと考えていましたか?

北海道の会社で生み出されたキャラクターは、バーチャルアイドルとして世界的な人気を持つまでになりましたが、それはユーザーからユーザーへ、自然に広まっていったものでした。ピクシブでは、企業タイアップなどの「仕掛け」を自ら起こすことで、クリエイターが羽ばたける場所を創り出したいと考えていました。

現在の仕事内容について教えてください。

2018年に発足した新規事業部 価値向上プロジェクトに所属し、自社イベントの企画運営やコミケへの出展、ギャラリーの運営などを担当しています。リアルの場で多くの人にpixivの魅力を伝えたり、他の企業と協業してWeb上でのイベントを企画したりと、pixivの価値を高めるための活動を行います。ユーザーの活動支援を通してpixivの価値を向上していくというポイントを外さなければ、基本的には、“何をやってもいい”部署で、メンバー各自が自ら課題を見つけ、自ら目標設定をして行動しています。

どんなイベントを企画していますか?

現在は主に、海外展開と若年層ユーザーの開拓の2つのテーマを掲げて活動しています。海外展開は、まずは日本と市場が似ている台湾から進めています。pixivで人気の作家さんの個展を開いたり、企業と協業してイラストコンテストなどを開催したりと、現地のファンとクリエイターの交流の場を広げていきます。若年層ユーザーの開拓では、高校生限定のイラストコンテストを開催したり、大学でイラストレーターを招いての講座を開いたりと、学生向けの企画展を開催しています。私は主に、海外展開を担当しています。

なぜ、海外展開と若年層ユーザーの開拓が重要になるのですか?

海外展開に関して言えば、現在、pixivの新規会員登録の6割を海外ユーザーが占めていて、台湾、中国、アメリカを中心に大きく市場の成長が見込まれています。その一方で、国内では、一定のイラストファンを獲得してしまっていて、新規ユーザーが開拓しにくい状況になっています。そこで、若年層の開拓が必要になっています。また、会員数は増加し続けていても、投稿ユーザーの割合が減少しているという問題もあります。投稿ユーザーが減れば、閲覧ユーザーも自ずと減っていきます。そこで、pixivとはまだ接点を持たない人たちが多く存在する海外や若年層を中心に、作品を「つくる」喜び、作品を「共有して」「楽しむ」文化を広めていきたいと考えています。

これまで、特に印象に残っている仕事があれば教えてください。

3年目に、ギャラリーの企画・運営を手掛けることになり、人気Vtuberの生みの親であるイラストレーター・森倉円さんの個展を担当させていただくことになりました。個展を担当することは初めてで、ギャラリーのオープンまで時間もなくて大変でしたが、作家さんと毎日スカイプで打ち合わせを重ねて、会場のレイアウトやイベントの進行、グッズの企画など細部まで練り上げていきました。結果、来場者数もグッズなどの売上も期待以上の成果が出て、作家さんやファンの皆さまにも大変喜んでいただくことができました。

仕事をしていてワクワクするのは、どんな時ですか?

作家さんの力になれたと感じた時ですね。手掛けたイベントや画集がきっかけで、新しい仕事につながったり、ファン層が広がったりといった報告を作家さんからいただけた時など、作家さんが飛躍する機会をつくれたと感じた時は、感動するほど嬉しいです。個展などでは予算の制約もありますが、できるだけ作家さんの希望を反映したいと思っています。そのためには、自分ができることは何でもやります。ある個展では、作家さんの世界観を反映させるため、自分で工具を使って扉を作成し、会場を装飾しました。時間も予算もなくて大変でしたが、楽しい思い出です。

これからの目標について教えてください。

私はクリエイターさんが好きで、尊敬もしています。単発の案件も含めるとこれまでに延べ1000人以上のクリエイターさんとやりとりをしてきました。これからも、クリエイターさんのためになる仕事をしていきたいと思います。投稿ユーザーを増やしていくことも課題ですね。pixivにはプロとして活躍されている方や、プロ級にイラストが上手い方がたくさんいるので、投稿を敬遠してしまうユーザーさんもいます。初心者でも参加できるイラストコンテストを開催して投稿のハードルを下げるなど、今以上に誰もが創作活動を楽しめる場にしていきたいと考えています。

最後に、ピクシブの「人」の魅力を教えてください。

「夢を描く力」を持っている人が多いですね。3年後、5年後に世の中はこう変化しているとイメージをして、自ら課題を見つけてアプローチしていく、“自走できる人”が集まっています。そして、「この分野では誰にも負けない」といった、好きなものへの強い愛を持つ一方で、他者には協力的な優しい人が多いですね。そんな人たちと一緒に、世界中の人たちから愛されるサービスを生み出せるのは、本当に幸せなことだと思います。