以前はアニメやゲームの仕事をされていたそうですね?

ずっと、好きなことを仕事にしてきました。就職活動はエンタメ系の企業に絞り、特にアニメを広める仕事がしたいと思っていました。初めに入社したのはアニメ関連の会社です。WEBディレクターとして、声優さんが出演するラジオの企画や配信・更新、WEBメディアの開発・運用などを担当しました。半年ほど、アニメグッズの専門店に出向して店舗で働いていたこともあります。そして、アニメの次はゲームの仕事にチャレンジしようと思い、ゲーム制作会社に転職し、ソーシャルゲームのマーケティングディレクターをしていました。

なぜピクシブに転職しようと思ったのですか?

はい。もともとアニメ、ゲーム、マンガが好きで、アニメ、ゲームと経験できたので、次はマンガの仕事しか考えていませんでした。ただし、自社サービスなどを活用して主導的にマンガビジネスができる会社を探してみると、3社に絞られました。その中でもピクシブは第一志望でした。

なぜ、ピクシブが第一志望だったのですか?

最初に入社したアニメの会社でピクシブの社員と一緒に働いていたことがあり、魅力的な社員の多さに惹かれていました。エンジニアとして技術力が高いことはもちろん、プロダクトの進め方や、メンバーやパートナーとのコミュニケーションの取り方が上手な人が多く、そうした「いい仕事の進め方」が文化として根付いている会社という印象を受けました。また、Web業界は人材の流動が激しいのに、ピクシブは優秀な社員の定着率が高いこと。エンジニアからマネージャーにキャリアアップして活躍している人が多いことにも惹かれました。

ご自身も入社してすぐ、マネージャーへ昇進されていますね。

2018年11月にpixivコミックのディレクターとして入社し、翌年4月にプロダクトマネージャーへ、11月からマネージャー代行を任され、今に至ります。

プロダクトマネージャーとマネージャーの違いは何ですか?

ピクシブでは自社のWebサービスを「プロダクト」と呼びます。プロダクトマネージャーは各プロダクトの目標設定や戦略立案、プロダクトのリリースから改善・更新、事業の拡大・縮小まで、プロダクト運営に責任を持ちます。マネージャーは事業戦略や開発戦略の策定、プロダクトと社員の成長を考えた組織づくりなどのピープルマネジメントを担当します。

マネージャーとして、どのような戦略を考えていますか?

いろいろありますが、大きくは、pixivコミックが、出版社と作家さんからより頼りにされる存在へと成長するための戦略を考えています。電子書籍のマンガサービスは、出版社が雑誌ごとにアプリを開発するなど、各社でWeb戦略に力を入れていることもあり、pixivコミックの価値も相対的に下がってきていると考えています。しかし、pixivコミックには、pixivのブランド力と、pixivコミックに掲載されているマンガが好きなユーザーが数多くいます。ここに魅力を感じている出版社は多く、現在も100誌以上の雑誌とやりとりをしています。マンガを発行しているほとんどの出版社と取引がありますね。

人のマネジメントに関しては、どのようなことをされていますか?

マネージャーになりたてですので、チームのメンバーがどう成長していけば良いのかを考えるところから始めています。具体的には、18名のメンバー全員と1on1でミーティングを行い、成長の方向性や部署方針の合意形成、改善などについて話し合いました。1on1のミーティングは、今後も月1回のペースで続けていきます。

「作家に頼られる存在になる」ことについては、どうですか?

実は、この背景に、当社だけではなく、マンガ業界全体が抱えている大きな課題があります。これは上司の受け売りですが、作家さんから頼りにされるには、最低でも「マンガで食える」状況を作らなければなりません。マンガだけで食べていける人が増えれば、作家を目指す人も増えていきます。反対に、作り手が減れば読み手も減り、読み手が減れば作り手も減り、新しいマンガが作られなくなるという悪循環に陥ります。いま、ここにとても危機感を感じています。

マンガ文化への危機感ですか?

今の小学生、中学生は、動画やソーシャルゲームに可処分時間を相当使っていて、マンガを読む習慣は減ってきています。今後、5Gの時代が来て動画コンテンツがよりハイクオリティに、よりリーズナブルになれば、マンガはさらに読まれなくなるでしょう。今でもすでに、単行本で1冊400円ほどのマンガは「高級品」になっています。高級品になったコンテンツは衰退し、淘汰されていきます。マンガが滅びないようにするにはどうすればいいか?こうした危機感を本気で感じ、役員レベルで対策を考えている会社は少ないでしょう。私の入社面接時も、役員や事業部長と、マンガ文化の存続について語り合ったことを覚えています。

マンガ文化の発展に向けて、どのようなことを考えていますか?

危機感は出版社も強く感じていますので、出版社と協力して何か面白い取り組みができたらなと考えています。また、書き手を増やす努力も進めています。例えばpixivコミック月例賞では、プロではない作家や出版社で連載を持たない作家にできるだけ注目して審査をしています。ここ2~3年では、50人ほどの作家さんがプロデビューを果たしています。

特に、マンガ好きの求職者に向けてメッセージはありますか?

1日中マンガのことを考えられる仕事です。マンガを読む仕事だってあります。コミック部では、pixivに投稿されたオリジナル作品から、アプリに掲載するための作品を選ぶ編集委員のような業務が毎日1時間ありますが、「こんなマンガもあるんだ!」という発見もあり、かなり面白い仕事です。数百人にしか読まれていない良質なマンガを見つけ、それをお勧めすることで何万人にも読まれるようになる。こうした体験ができる職場は、かなり良いのではないでしょうか。